「ペットが好きだから副業にしたい」——その気持ちは大切です。ですがペットシッターは命を預かる仕事であり、さらに日本では法律(動物愛護管理法)による規制があります。
結論として、未経験者が安全に始める最短ルートは①登録済みのペットシッター会社(第一種動物取扱業)に所属して経験を積むことです。いきなり個人でSNS集客や知人から有償で受けるのは、無登録営業に当たるリスクがあるためおすすめできません。
この記事では、30代・副業初心者(週末4時間)を想定し、法律を守りながらペットシッター副業を始め、信頼を積み上げて継続依頼につなげる手順をまとめます(※法的判断は自治体により運用差があるため、最終確認は管轄の動物愛護担当窓口へ)。
最初に必ず確認:ペットシッターは「第一種動物取扱業(保管)」の登録が関係する
有償でペットの世話を行う業務は、動物愛護管理法の枠組みで第一種動物取扱業に該当し得ます。ペットシッターは一般に「保管」に関係し、登録を受けずに営業すると処罰対象になる可能性があります。自治体からも「無登録営業に注意」と明確に注意喚起が出ています。
また、現実的なハードルとして、第一種動物取扱業の事業所には動物取扱責任者の選任が必要です。責任者になるための要件は自治体ページでも示されており、たとえば「種別に係る半年以上の実務経験」などが要件の一つとして挙げられています。
ここが重要で、完全未経験の状態だと、この要件をすぐ満たせません。つまり「未経験が週末だけで、いきなり個人開業して集客する」のは、法律面・実務面の両方でハードルが高いのが現実です。だからこそ、初心者は“合法ルート”を先に選ぶ必要があります。
無登録営業のリスク:知らなかったでは済まない(罰則・信用の失墜)
無登録営業は、自治体の案内でも100万円以下の罰金に触れられています。さらに、罰則以上に重いのが信用の失墜です。
- 依頼者から「この人、登録してないの?」と不信感を持たれる
- プラットフォームでのアカウント停止・掲載停止につながる
- 万が一の事故時に、補償や契約の前提が崩れやすい
ペットシッターの信頼は「動物を可愛がれる」よりも、「ルールを守り、事故を防ぎ、説明できる」で決まります。副業初心者ほど、まずは合法性の担保を最優先にしてください。
未経験が安全に始める現実的ルートは2つ
ルートA:登録済みの会社・事業者に「所属」して始める(最優先)
未経験から最も安全なのは、第一種動物取扱業として登録しているペットシッター会社・代行業者のスタッフ(アルバイト/業務委託)として働くことです。会社の登録の枠内で動けるため、コンプライアンス面の不安が大きく減ります。
ただし会社によっては、週◯日以上などのシフト条件があります。週末4時間しか動けない場合は、応募前に次を確認しましょう。
- 週1回・短時間稼働が可能か(最低稼働時間の有無)
- 担当エリア(移動時間が読めるか)
- 研修・同行(OJT)の有無
- 事故時の補償・連絡フロー
ルートB:将来的な個人開業に向けて「要件を満たす準備」をする
将来、個人として事業を持ちたい場合は、動物取扱責任者の要件を満たす必要があります。要件の考え方は自治体により案内があり、例えば「半年以上の実務経験」や「学校等での教育」「資格」などが要件として示されています。
さらに自治体によっては、実務経験と同等と認められる経験(実飼養経験)の考え方を案内しているところもあります。
重要なのは、ここが自治体運用で差が出る領域ということ。個人開業を検討するなら、最初に管轄の動物愛護担当(動物愛護センター等)へ事前相談し、「自分の想定している形(訪問型、散歩代行のみ等)が登録対象か」「責任者要件をどう満たすか」を確認してください。
「散歩代行だけならOK?」は危険:自治体判断が分かれる可能性がある
ネットでは「散歩代行は資格不要」という説明も見かけますが、これは一律に断言できません。自治体がどのように「業(反復継続の有償)」を判断するか、また行為の内容によって解釈が分かれ得るためです。
したがって、初心者向けの安全策としては、次のスタンスが無難です。
- 自己判断で「大丈夫」と決めない
- 散歩代行しかやらない場合でも、管轄自治体へ確認
- 迷うなら、まずは登録済み事業者に所属
ここを曖昧にしたまま有償で受けるのが、最も危ない始め方です。
週末4時間で成立させる「仕事設計」:短時間×近距離×報告の型
副業(週末4時間)でペットシッターを成立させるには、スキルよりも設計が重要です。おすすめは、最初の1〜2ヶ月は以下に寄せること。
- 短時間訪問(30〜60分):時間が読みやすい
- 近距離(移動15分以内):交通遅延リスクを減らす
- 高難度を避ける:投薬・介護・多頭・大型犬の強い引っ張り等は後回し
- 報告テンプレを固定:安心感=リピート
また、週末稼働だと「平日の日中トラブル対応ができない」が弱点になります。ここは、事前にSLA(対応の約束)を言語化しておきましょう。
- 緊急連絡は受けるが、現地対応は「原則◯時以降」など
- 緊急時は「飼い主→かかりつけ病院→代替連絡先」の順で動く
約束を曖昧にすると、相手の期待が膨らみトラブルになります。副業ほど“できる範囲の宣言”が信頼になります。
信頼を得る準備:未経験者が先に作るべき「3点セット」
実績ゼロでも選ばれる人は、プロフィールではなく運用の丁寧さで勝っています。最初に作るべきは次の3点セットです。
1)顔合わせ(事前打ち合わせ)シート
- 性格(怖がり/興奮しやすい/噛み癖など)
- NG行動(抱っこ不可、触られるのが苦手等)
- 食事(量・回数・アレルギー・禁止おやつ)
- トイレ(場所・失敗しやすい状況)
- 散歩(装着方法、引っ張り、他犬反応、拾い食い)
- 緊急連絡先(飼い主・家族)/かかりつけ病院
- 立ち入り範囲(触ってはいけない物、部屋)
2)報告テンプレ(毎回同じ型で安心を作る)
- 到着時の様子(元気/落ち着き/異変)
- 食事:完食/残量
- 排泄:有無、気になる点
- 遊び・散歩:時間、様子
- 写真:2〜3枚(※撮影可否は事前確認)
- 次回に向けたメモ(気づき)
3)緊急時フロー(迷わないための順番)
- 異変→まず安全確保(誤食の疑い等は触れさせない)
- 飼い主へ連絡(返信がない場合の代替連絡先へ)
- 必要に応じて動物病院(事前に指示ルールを決める)
- 事後は時系列で記録(何時に何が起き、何をしたか)
これがあるだけで「この人は怖い状況でも崩れない」という信頼が生まれます。
鍵の預かりは“書面”で守る:「鍵預かり証」テンプレ(例)
訪問型で多いのが、鍵の受け渡しトラブルです。口頭やDMだけだと、後から揉めやすいので、初心者ほど書面(テキストでも可)で残しましょう。
鍵預かり証(例)
- 預かり日:XXXX年XX月XX日 XX:XX
- 返却予定:XXXX年XX月XX日 XX:XX
- 鍵の種類:玄関キー1本/スペアなし 等
- 受け渡し方法:対面/ポスト投函(投函先の指定)等
- 保管方法:専用ケースに入れ、外出時は常に携行 等
- 同意:上記内容で預け、返却を確認する(依頼者署名/同意)
これだけでも「管理が丁寧な人」という評価につながり、事故の抑止にもなります。
保険・補償・契約:月数千円の副業で人生を賭けない
ペットシッターは、事故が起きると損害が大きくなりやすい仕事です。そこで原則は次の通りです。
- 所属先(会社/プラットフォーム)の補償範囲を確認し、対象外条件まで読む
- 個人で受けるなら、賠償責任保険等を検討し、補償上限と免責を理解
- 作業範囲(できる/できない)を事前に合意し、記録を残す
また、依頼内容が「医療行為に近い判断」を含む場合は特に慎重に。ここで無理をすると、事故だけでなくコンプライアンス面でも危険です。困ったら「できません」ではなく「安全のため、専門家・飼い主判断が必要です」と説明するのがプロです。
最初の1ヶ月ロードマップ:未経験が“合法”に信頼を積む手順
1週目:合法ルートを選ぶ(ここが最重要)
- 管轄自治体に「自分の想定する形が登録対象か」確認する(迷うなら所属ルートへ)
- 登録済み事業者の求人を探す(週1・短時間OKを優先)
- 対応可能範囲(散歩のみ/短時間訪問のみ)を決める
2週目:顔合わせシートと報告テンプレを作る
- 顔合わせ質問をテンプレ化(本文のチェックリストをコピペでOK)
- 報告テンプレを作り、送信時間の目安も決める
- 緊急時フローを1枚にまとめる
3週目:研修・同行で「事故ポイント」を体で覚える
- 装着(首輪/ハーネス)と玄関開閉のルールを固定する
- “やらないこと”リストを明文化する
- 鍵管理の運用(預かり証)を準備する
4週目:初案件は「難易度の低い条件」で受ける
- 短時間・近距離・話者(飼い主)と連絡が取りやすい条件
- 必ず事前打ち合わせ(顔合わせ)を実施
- 報告テンプレで品質を固定し、次回提案を一言添える
よくある失敗5選と回避策
失敗1:登録が必要なことを知らず、個人で有償受注してしまう
回避策:「自分の提供形態が登録対象か」を自治体に確認。迷うなら登録済み事業者に所属する。無登録営業は自治体も注意喚起しています。
失敗2:散歩代行を軽く見て、脱走・他犬トラブルを起こす
回避策:装着確認を“儀式化”。ルートは初回は短く安全寄り。拾い食い・他犬反応は事前確認し、無理なら受けない。
失敗3:鍵の受け渡しが曖昧で、紛失・疑念につながる
回避策:鍵預かり証(書面)+保管場所固定+受領/返却の記録。
失敗4:緊急時に自己判断で抱え込み、報告が遅れる
回避策:緊急時フローを作り、飼い主・病院連絡の順番を決める。副業で即対応できない前提も合意しておく。
失敗5:口コミが怖くて断れず、高難度案件を引き受ける
回避策:“やらないこと”を最初に提示する。断るのは失礼ではなく安全管理。むしろ信頼が上がることが多い。
向いている人/向いていない人
向いている人
- 確認・記録・報告が丁寧(ルールで自分を守れる)
- 「できない」をきちんと言える
- 時間と範囲を設計して、安定運用ができる
向いていない人(工夫で改善は可能)
- ノリで引き受けてしまう(→メニュー固定で防ぐ)
- 連絡が遅れがち(→返信可能時間を明記し、テンプレ返信を用意)
まとめ
ペットシッター副業は、未経験でも目指せます。ただし日本では法律上の規制があるため、初心者が最初にやるべきは「テクニック習得」より合法ルートの選択です。
まずは登録済みのペットシッター会社に所属し、顔合わせ・報告・鍵管理・緊急時対応の型で信頼を積みましょう。将来的に個人開業を考えるなら、動物取扱責任者の要件などを自治体で確認し、経験を積んでから進めるのが安全です。
次にやること(3ステップ)
- 今日:管轄自治体の動物愛護担当窓口に「自分の想定する形が登録対象か」を確認する(不安なら所属ルートへ)
- 今週:登録済み事業者の求人を探し、「週末4時間で可能か」「研修・補償」をチェックして応募する
- 来週末:顔合わせシート・報告テンプレ・鍵預かり証を作り、初案件で“型”を回して改善する
