「ノーコードで業務自動化ができれば副業になると聞いたけど、もし設定ミスで業務が止まったら怖い……」
「プログラミング未経験の自分が、企業の業務フローに手を出して大丈夫なのかな?(要件定義も不安)」
業務効率化のニーズが高まる中、Zapier・Make・GASなどを使った自動化スキルは価値があります。ただし初心者が最初につまずくのは、ツール操作よりも「要件定義(ヒアリング)」と、実務で起きがちな「契約・課金トラブル(誰が払う?タスク上限?無限ループ?)」です。
この記事では、30代会社員・副業初心者(週末3時間)を想定し、小さな業務改善で安全に価値提供するための「始め方」と「案件の作り方」を手順書としてまとめます(受注や収益を保証する内容ではありません)。
この記事で分かること
- ノーコード自動化副業の全体像(何を提供する仕事か)
- Zapier / Make / GASの違いと、初心者の選び方
- 要件定義が不安でも崩れない「5つの箱」ヒアリング
- 案件を作る方法(メニュー化・作例・提案テンプレ)
- 金銭トラブルを防ぐ:契約主体・タスク消費・無限ループ対策
なぜ今「ノーコード自動化副業」で初心者でも価値提供しやすいのか
多くの現場には、今も“人間がコピペしている作業”が残っています。問い合わせ転記、スプレッドシート更新、通知、ファイル整理、リマインド、請求書の仕分け……。こうした作業は、大規模開発をしなくても「アプリ同士をつなぐ」だけで改善できます。
ここで出てくるAPIという言葉は、難しく感じるかもしれません。ざっくり言うと、API=アプリ同士をつなぐ“接続口”のようなものです。ZapierやMakeは、この接続口を使って「Aで起きたことをBに伝える」仕組みをノーコードで作れる、というイメージでOKです。
つまりノーコード自動化副業は、技術勝負というより、業務のムダを見つけて、止まらず回る仕組みにする仕事。初心者でも「現場の不便」を言語化できれば、価値提供しやすい分野です。
ノーコード自動化副業の全体像:提供価値は「作る」より「止まらず回る」
自動化案件は、だいたい次の3フェーズで構成されます。初心者ほど、この順番を守ると事故が減ります。
- 1)要件定義:現状の手作業、ゴール、例外、権限、運用担当を決める
- 2)実装:Zapier / Make / GASでフローを作る
- 3)運用:エラー通知、ログ、手動復旧手順、引き継ぎ資料を整える
副業で信用が積み上がるのは、2)よりも3)です。クライアントは「作れた」より「止まらない」「困ったら戻せる」「説明がある」を評価します。
Zapier / Make / GASの違い:初心者は“役割”で選ぶ
ツール選びで迷ったら、機能比較よりも「何をつなぐか」で決めるのが現実的です(料金や仕様は変わるため、契約前に必ず公式情報を確認してください)。
Zapier:とにかく早く“つなぐ”のが得意(タスク制)
- 強み:対応アプリが多く、初心者でも作成が早い
- 向く:フォーム→通知、メール→スプレッドシート、CRM更新など定番連携
- 課金の注意:Zapierは「タスク」という利用量で管理され、使用状況は請求サイクルごとに確認できます
- 追加課金の注意:プラン上限超過時に「pay-per-task(超過課金)」が発生する場合があるため、運用設計が重要です
Make:分岐・加工・複雑フローに強い(クレジット/オペレーション制)
- 強み:視覚的にフローを組めて、条件分岐やデータ加工が得意
- 向く:複数サービス連携、ルールが多い業務(条件別の振り分けなど)
- 課金の注意:Makeはモジュール実行が「クレジット/オペレーション(操作)」として消費され、どこで増えるかの理解が必須です
GAS:Google周りの“内製自動化”に強い(ただしコードは少し書く)
- 強み:Googleフォーム/スプレッドシート/Gmail/ドライブ等の自動化が強い
- 向く:社内運用、整形、定時実行、メール送信など
- 仕様の注意:Apps Scriptには実行時間などの制限(クォータ)があり、長時間・大量処理は工夫が必要です
初心者のおすすめは、まずZapier(またはMake)で基本の連携を身につけ、Google案件が増えてからGASを“必要になってから”足すこと。最初から全部覚えようとすると挫折しやすくなります。
初心者が最初に作るべき「小さな業務改善」ネタ10選
案件化しやすいのは、成果が分かりやすく、例外が少ないものです(対象サービスの利用規約・権限ルールの範囲で行いましょう)。
- フォーム回答 → Slack/Chatworkへ通知+スプレッドシート追記
- 問い合わせメール → チケット作成+担当者へ通知
- Googleカレンダー予定 → 前日リマインド
- スプレッドシート更新 → 関係者に自動共有(リンク付き)
- 請求書PDF → フォルダ整理+ファイル名統一
- EC注文 → 在庫シート更新+発送担当へ通知
- 採用応募 → 受付返信+面接候補日案内(テンプレ)
- 日報提出 → 未提出者へ控えめなリマインド(回数制限)
- アンケート集計 → 自動グラフ更新+週次サマリー送信
- 顧客管理の転記 → 二重入力をやめて一元管理(入口を揃える)
派手さはなくても「毎週のムダが消える」改善は満足度が高く、継続依頼につながりやすいです。
要件定義が不安な人へ:ヒアリングは「5つの箱」で聞けば崩れない
要件定義は才能ではなく、型です。初心者は、次の5つを順番に埋めるだけで、ほとんどの自動化案件が整理できます。
箱1:目的(何が困っている?)
- 今、何に時間が取られていますか?(週に何回・何分)
- 自動化できたら、何が一番うれしいですか?
箱2:入力(トリガー)
- 何が起きたら開始しますか?(フォーム送信、メール受信、行追加など)
- 入力データの例を3件ください(実データが難しければダミーでも)
箱3:処理(ルール)
- 条件分岐はありますか?(地域で担当を変える、金額で処理を変える等)
- 例外は何ですか?(手動対応に逃がす条件を決める)
箱4:出力(ゴール)
- 最終的にどうなっていればOKですか?(通知、登録、ファイル作成など)
- 誰が受け取りますか?(担当、チーム、顧客)
箱5:運用(止まったらどうする?)
- エラー通知は誰に飛ばしますか?
- 平日昼に止まった場合、誰が一次対応しますか?(会社員副業は超重要)
- 権限は誰のアカウントで動かしますか?(共有・退職時のリスク)
- ランニングコストは誰が払いますか?(契約主体)
- タスク/クレジットが上限に近づいたら誰が気づきますか?
この5箱を埋めるだけで、クライアントが求めているのは「自動化」ではなく、“運用まで含めた安心”だと分かります。副業初心者の最大の武器は、ここを丁寧にやることです。
【重要】金銭トラブルを防ぐ:契約主体とランニングコストの決め方
ここが抜けると、納品後に揉めます。ZapierやMakeは、無料枠・上限・超過課金などが絡みやすく、「誰が月額料金を払うのか」を曖昧にしたまま進めるのは危険です。
原則:ツールのアカウント(契約)はクライアントに持ってもらう
おすすめの基本ルールはこれです。
- クライアントが:アカウント作成・プラン契約・支払い(ランニングコスト負担)
- あなたが:招待されて構築(または納品時に権限譲渡)
理由はシンプルで、あなた個人のアカウントで作ると、納品後にタスク上限で止まる/請求があなたに来る/引き継ぎができないが起きやすいからです。チーム運用では、所有者移行の手順が公式に案内されているケースもあります(例:Zapierのチームアカウントの所有権移行)。
「自分の無料アカウントで作って納品」は、初心者がやりがちな地雷
よくある事故パターンは次の通りです。
- 無料枠で作って納品 → 実運用でタスク上限を超える → 途中で止まる
- 超過課金が発生 → 「誰が払うの?」で揉める
- あなたのアカウントに依存 → 退会/停止/副業終了で運用不能
だからこそ、提案段階で「プランはクライアント契約が原則」と明記し、必要なら「プラン選定の相談(一般情報)」として案内するのが安全です(具体的な契約判断はクライアント側で公式情報を確認して決めてもらうのが基本)。
【重要】タスク消費と無限ループ:高額請求や上限枯渇を防ぐ設計
ノーコード自動化で一番怖いのは、設定ミスでタスク(Zapier)やクレジット/オペレーション(Make)が一気に消費され、上限に到達して止まる、または超過課金が発生する事故です。
Zapier:タスクは「アクションが成功した回数」で増える
Zapierではタスク使用量を請求サイクルごとに確認でき、上限を超えると超過課金(pay-per-task)が発生する場合があります。
つまり「便利だから全部つなぐ」ではなく、どのアクションが何回走るかを要件定義で見積もる必要があります(毎日100件来るフォームに、重い処理を複数入れると、タスクは一気に増えます)。
Make:バンドルが増えると、後続モジュールが“掛け算”で増える
Makeでは、モジュールの実行(オペレーション)が消費の単位になり、バンドル(処理単位)の数が増えるほど、後続モジュールの実行回数が増える(掛け算になる)仕組みが公式ヘルプで説明されています。
初心者がやりがちなのは、トリガーが10件拾っただけで、後ろの4モジュールがそれぞれ10回走り、合計が一気に増えるケース。これを理解していないと「数分で上限が溶けた」が起きます。
無限ループの典型例(初心者あるある)
- 「スプレッドシートに行追加」をトリガーにして、同じシートに行追加する処理を書いてしまう
- 「Notion更新」をトリガーにして、同じNotionデータを更新する処理を書いてしまう
- エラー時の再実行が繰り返され、同じデータを何度も処理してしまう
こうなると、短時間でタスク/クレジットを消費し、上限到達や請求トラブルに直結します。
テスト時に必ずやる「課金事故を防ぐ7つの設定」
- 1)最初はOFFで作る:完成まで自動実行させない(公開・有効化のタイミングを管理)
- 2)少量データでテスト:実データ大量投入の前に、ダミー1〜3件で動作確認
- 3)二重処理防止:ユニークIDで「処理済み判定」を入れる(重複を弾く)
- 4)ループ遮断:トリガー元と書き込み先が同一なら、フラグ列で除外する
- 5)フィルターで絞る:条件に合うものだけ通す(全部処理しない)
- 6)エラー通知:失敗が起きたら即通知(気づけないのが一番危険)
- 7)上限監視:タスク/クレジットの使用状況を「誰が見るか」決める(運用担当)
この7つを、要件定義の「箱5:運用」に入れておくだけで、初心者の事故率は大きく下がります。
GASの注意点:実行時間制限(いわゆる“6分の壁”)とクォータ
GASは便利ですが万能ではありません。Apps Scriptにはサービスごとのクォータがあり、実行時間制限などが公式ドキュメントで案内されています。
よく言われる“6分の壁”は、初心者が大量データ処理に手を出して詰む原因になります。副業初心者の段階では、GASは次のような用途に寄せるのが安全です。
- スプレッドシートの整形(入力補助、フォーマット統一)
- 定時実行(毎朝リマインド、週次サマリーなど)
- 軽量なデータ処理(少量の行更新、メール送信)
もし「数万行を毎日処理したい」などの要件が出てきたら、要件定義の段階で分割処理(バッチ)や別アーキテクチャの検討が必要です。無理にGASで押し切らないほうが、結果としてクライアントの満足度も上がります。
案件の作り方:初心者は「商品メニュー化」すると売りやすい
自動化は工数が読みにくいので、最初からフルカスタム見積もりだと初心者は消耗します。おすすめは、よくある自動化をメニュー化して、ズレた分はオプションに逃がす設計です。
初心者向けメニュー例(そのまま使える)
| メニュー | 内容 | 範囲外(例) |
|---|---|---|
| ミニ自動化1本 | 1トリガー→1出力(例:フォーム→通知)+テスト+引き継ぎメモ | 複数分岐、大量処理、複数サービス横断 |
| 業務改善スターター | 5箱ヒアリング→自動化2本→運用設計(通知/復旧)→資料 | 社内承認フロー設計、権限移管の実作業、複雑な例外対応 |
| 運用保守(継続) | 月次点検、軽微修正(上限付き)、エラー一次切り分け | 仕様変更レベルの改修(別見積もり) |
ここで必ず入れたいのが、ランニングコスト(ツール料金)の負担者と、タスク上限到達時の対応です。契約書や合意書の文面はケースで変わるため、必要に応じて専門家へ相談しつつ、少なくとも「誰が払うか・どこまでが作業範囲か」だけは文章で残すのが安全です。
実績ゼロでも信頼を作る:先に「作例」を3つ作る
ノーコード自動化はポートフォリオが強い分野です。完成物を“画面”で見せられるからです。案件を取る前に、次の3つの作例を用意しましょう(個人情報や実在企業のデータは使わない)。
- 作例1:Googleフォーム→スプレッドシート→Slack通知
- 作例2:Gmailの特定ラベル→ドライブ整理→通知
- 作例3:条件分岐ありの担当者振り分け(例:地域で通知先を変える)
作例には必ず「5箱ヒアリングシート」と「運用メモ(止まったときの手順)」を添えてください。クライアントが欲しいのは“作れる人”より、“安心して任せられる人”です。
提案の型:初心者は「要件→設計→コスト→リスク→運用」で書くと通る
提案文は、熱意よりも“安心”。特に自動化は、運用と費用の不安が強いので、ここを先回りします。
提案文テンプレ(コピペして埋めるだけ)
- 現状理解:「現状は○○の手作業が週○回あり、△△がボトルネックだと理解しました」
- ゴール:「○○が発生したら、□□に自動記録し、担当へ通知する状態をゴールにします」
- 設計:「トリガーは○○、処理ルールは△△、出力は□□。例外は××のとき手動対応にします」
- コスト:「Zapier/Make等のツール費用は原則クライアント契約で、使用量(タスク/クレジット)上限を超えない設計にします」
- リスク:「無限ループ等で使用量が急増しないよう、フィルター・重複防止・テスト手順を入れます」
- 納品物:「自動化フロー+テスト結果+引き継ぎ資料(編集箇所/復旧手順)」
- 運用:「エラー通知先、一次対応者、対応可能時間(夜/週末)を合意します」
週末3時間で進める:4週間ロードマップ
1週目:ツール1つに絞って“作例1本”
- Zapier or Makeを選ぶ(迷ったらZapier)
- フォーム→スプレッドシート→通知の作例を作る
- 5箱ヒアリングシートと運用メモをセットで作る
2週目:条件分岐+重複防止で“事故らない設計”を入れる
- 担当者振り分け(条件分岐)を追加
- 重複防止(処理済み判定)とフィルターを入れる
- テストは少量データで実施(タスク大量消費を避ける)
3週目:GASを“補助輪”として導入(限界も理解する)
- スプレッドシート整形・定時実行など軽量用途で練習
- 実行時間制限やクォータを把握し、無理な要件は避ける
4週目:メニュー化+提案テンプレで営業開始
- 「ミニ自動化1本」メニューを作る(範囲外も明記)
- 契約主体(ツール費用負担者)と運用ルールを提案に組み込む
- 小規模事業者・知人・制作会社周辺に「ヒアリング募集」を出す
よくある失敗7選と回避策
失敗1:要件が曖昧なまま作り始めて、作り直し地獄
回避策:5箱ヒアリングで「例外(手動に逃がす条件)」まで決めてから作る。
失敗2:例外を全部自動化しようとして複雑化する
回避策:最初は“80点で回る”を優先。例外は手動でOKにする。
失敗3:ツール費用の負担者が曖昧で揉める
回避策:原則「クライアント契約・クライアント負担」。招待・権限移行の方針を提案段階で明記する。
失敗4:設定ミスで無限ループ→タスク/クレジットが一瞬で溶ける
回避策:少量データでテスト、重複防止、フィルター、ループ遮断(同一データ更新の除外)を必ず入れる。Makeはバンドル増加が後続を掛け算で増やしやすい。
失敗5:上限を超えて止まる/超過課金が発生する
回避策:使用量(Zapierのタスク、Makeのクレジット/オペレーション)を運用担当が確認できるようにし、必要に応じてプランや処理量を見直す。
失敗6:会社員なのに平日昼の緊急対応を約束して詰む
回避策:一次連絡の目安と作業可能時間(夜/週末)を合意。緊急対応はオプション化する。
失敗7:GASで大量処理に挑んで動かない(実行時間制限)
回避策:GASは軽量用途に寄せる。大量処理が必要なら分割処理や別手段を検討する。
向いている人/向いていない人
向いている人
- 「この手作業ムダだな」に気づける
- 丁寧にヒアリングし、文章化できる
- 運用(通知・復旧手順)まで整えるのが苦じゃない
向いていない人(ただし工夫でカバー可能)
- すぐ作り始めてしまう(→5箱シートを先に埋める)
- 複雑なものを作りたくなる(→まずは1トリガー→1出力)
- 断れない(→範囲外を明記し、オプションに逃がす)
すぐできるチェックリスト(保存推奨)
- ツールを1つに絞った(Zapier/Makeのどちらか)
- 5箱ヒアリングシートを用意した(運用とコストまで聞く)
- 「ツール契約は原則クライアント」の方針を決めた
- タスク/クレジットの上限と監視担当を決める前提を持った
- 無限ループ対策(重複防止・フィルター・少量テスト)をテンプレ化した
- エラー通知・復旧手順のテンプレを用意した
- 会社員として対応可能時間(夜/週末)を合意する方針がある
- 作例を3つ作る計画がある
まとめ
ノーコード自動化副業は、週末3時間の会社員でも始めやすい一方、成功の鍵はツール操作ではなく要件定義と運用設計です。特に実務では、契約主体(誰がツール料金を払うか)と、タスク/クレジット消費(無限ループ・上限枯渇)のリスク管理が欠かせません。
- 狙うのは「小さな業務改善(ムダ削減)」
- ヒアリングは5箱(目的/入力/処理/出力/運用)で型化
- ツール契約は原則クライアント、使用量の監視担当も決める
- 無限ループ対策(重複防止・フィルター・少量テスト)を必ず入れる
- GASにはクォータ(実行時間制限など)があるため、無理な要件は避ける
次にやること(3ステップ)
- 今日:身近な業務の“手作業”を10個書き出し、1つを「1トリガー→1出力」に落とす(5箱シートで要件化)
- 今週:ZapierかMakeで作例を1本作り、無限ループ対策(重複防止・フィルター・少量テスト)と運用メモまでセットで作る
- 来週:「ミニ自動化1本」メニューを作り、提案文に「契約主体(ツール費用)」「タスク上限の監視」「止まったときの対応」を必ず入れてヒアリング募集を出す

