副業の経費は「何でも入れていいもの」ではなく、基本は“副業の売上(収入)を得るために必要だった支出”が対象です。初心者が不安を減らす近道は、線引きを完璧に暗記することではなく、領収書(レシート)と記録(ログ)をセットで残す運用を作ることです。
この記事では、経費の考え方・証拠の残し方・記録ルール・家事按分(混ざる支出の分け方)を、難しい専門用語を避けて“仕組み化”として解説します。
※本記事は一般情報です。個別事情で結論が変わるため、不安がある場合は税務署や税理士等の専門家、自治体の案内を確認してください。
導入:税金の恐怖は「知識」より「運用」で小さくできる
「カフェで作業した時のコーヒー代、これって経費に入れていいの?」
「レシートが財布に溜まってるけど、どう整理すればいいか分からない……」
副業を始めると必ずぶつかるのが、「経費の線引き」と「管理の面倒くささ」です。検索すると「これはOK」「あれはNG」と情報が錯綜していて、結局どうすればいいか迷ってしまいがちです。
実は、経費で一番大切なのは完璧な税法知識ではありません。「なぜこの支出が副業に必要だったのか」を、後から説明できる状態にしておくことです。
この記事では、難しい言葉で脅さずに、「経費になる・ならないの判断軸」と、ズボラでも続く「レシート&帳簿の管理ルーティン」を紹介します。確定申告シーズンに泣かないための準備を、今日から始めましょう。
なぜ「副業 経費」で不安になるのか(20万円以下の誤解もここで整理)
副業の経費が怖く感じる理由は、だいたい次の3つに集約されます。
- 線引きが曖昧に感じる:品目で白黒がつくと思うほど、迷いやすい
- 証拠の残し方が分からない:領収書はあるのに用途が説明できない
- 「20万円以下なら適当でいい?」と誤解しやすい
特に最後の「20万円以下」については、初心者がつまずきやすいので注意点だけ押さえておきます。
会社員の副業でよく聞く「所得20万円以下なら確定申告は不要」という話は、主に所得税の確定申告に関する取り扱いの一部です(条件があります)。一方で、住民税は別途申告が必要になる場合があり、自治体の案内に従う必要があります。つまり、「20万円以下=記録が雑でOK」ではありません。経費の根拠(領収書+記録)は、結局あなたを守る“保険”になります。
この先は「難しい判断を避ける運用」を中心に解説します。迷いをゼロにするより、迷っても破綻しない仕組みを作るのが目的です。
副業の経費の基本:判断の軸は「目的」と「関連性」
経費の考え方は、まずこの2点だけでOKです。
- 目的:副業の売上(収入)を得るために必要だったか
- 関連性:その支出が副業にどう関係するか説明できるか
ポイントは、経費の可否を「品目名」だけで決めないことです。例えば同じカフェ代でも、
- 副業の打ち合わせ(相手・内容・目的がメモされている)
- 気分転換(記録なし)
では、後から説明できる強さがまったく違います。
初心者が安全に進むコツは、まず「説明が簡単な支出」だけで運用を固めること。グレーを攻めないだけで、精神的にも管理的にもラクになります。
経費になりやすい・注意が必要・難しい:よくある例
※最終判断は状況で変わります。ここでは“運用として安全にしやすいか”の観点で整理します。
比較的説明しやすい(運用しやすい)
- 副業用の消耗品:文房具、梱包材、名刺、撮影小物など(用途が明確)
- ツール利用料:デザイン、予約管理、会計ソフト、ストレージ等(副業目的が明確)
- 外注費:編集、デザイン、作業代行など(請求書・支払記録とセット)
- 学習費:副業に直結する講座・書籍(内容と副業の関連をメモ)
家事按分が必要になりやすい(混ざる支出)
- 通信費:スマホ代、ネット回線、クラウド(副業利用の割合を決める)
- 光熱費:電気代など(在宅作業がある場合)
- 家賃:作業スペースがある場合(面積・用途の根拠が必要)
- 交通費・ガソリン:副業移動がある場合(移動目的の記録が重要)
初心者は慎重に(説明が難しくなりやすい)
- 普段の食事代(打ち合わせ等の記録がない)
- 衣類・美容・日用品(副業の必然性を説明しにくい)
- 家族の生活費(副業との関連が弱い)
最初は「説明が簡単な経費だけ」でOKです。慣れてきたら、必要に応じて専門家に相談しながら範囲を整えましょう。
領収書・レシートの残し方:基本は「証拠+用途メモ」
経費で不安が消える人は、例外なく“証拠の残し方”が上手いです。レシートを取っておくだけでなく、用途(副業との関連)を一言残すのが勝ち筋です。
最低限、残すべき3点セット
- 領収書/レシート(日付・金額・支払先が分かる)
- 支払い記録(クレカ明細、振込履歴、決済アプリ履歴など)
- 用途メモ(副業との関連が分かる一言)
紙レシート運用(初心者向け:まず破綻しない)
- レシートはその日のうちに回収(財布に溜めない)
- 月ごとに封筒 or クリアファイルへ(例:2026-01)
- 余白に用途を一言(例:「副業の発送用梱包材」「取引先Aと打合せ」)
電子で残す運用(ラクに続く:おすすめ)
- スマホで撮影して月フォルダに保存(例:/経費/2026-01/)
- ファイル名に「日付_金額_取引先_用途」を入れる(例:20260108_1480_○○文具_梱包材)
- 感熱紙(消えるレシート)は早めに撮影
重要:ネット購入など「電子取引」は“データのまま保存”が基本
ネットショッピングの領収書PDF、メール添付の請求書、クラウド請求書、カード明細など、電子データでやり取りした取引(電子取引)は、原則として紙に印刷して保存するのではなく、電子データのまま保存するのが現在のルールです(電子帳簿保存法)。
また、後から探せるようにするために、日付・金額・取引先などで検索できる状態にしておく考え方があります。初心者がやりやすい方法として、ファイル名に「日付_金額_取引先」を入れてフォルダ管理するだけでも、検索しやすさが大きく上がります。
※要件や扱いは条件で変わるため、詳細は国税庁等の案内を確認してください。本記事では「電子取引はデータで残す」「検索できるようにする」という実務の柱だけ押さえます。
記録(帳簿)の残し方:1行で「説明できる状態」を作る
帳簿は難しそうに見えますが、初心者はまず“家計簿レベル”で十分です。大事なのは税務用語ではなく、後から自分が説明できる記録になっていることです。
最小でOK:経費ログの項目テンプレ
| 日付 | 支払先 | 内容 | 用途メモ | 金額 | 支払方法 | 証拠(ファイル名/URL) | 按分率 | 計上額 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 2026/01/08 | 〇〇文具 | 梱包材 | 副業の発送用 | 1,480 | クレカ | 20260108_1480_○○文具_梱包材.jpg | 100% | 1,480 |
「按分率」と「計上額」まで入れておくと、家事按分がある副業でも管理が破綻しにくくなります。
記録が続く3原則(ここだけ守ればOK)
- 原則1:当日〜週1で入力(月末まとめは挫折しやすい)
- 原則2:用途メモは必ず一言(後で忘れる前提で書く)
- 原則3:支払い方法を分ける(可能なら副業用カード・口座)
副業用カード(または決済アプリ)を分けるだけで、仕分けの手間が一気に減ります。「レシートはあるのに合わない」の多くは、プライベート支出が混ざっているのが原因です。
家事按分の考え方:割合より「根拠を固定」するのが勝ち
家事按分は「プライベートと副業で共用している支出」を、使った割合で分ける考え方です。ここで重要なのは、上手い割合を作ることではなく、説明できる根拠を作って、毎月同じルールで運用することです。
按分の根拠パターン(初心者が作りやすい順)
- 面積ベース:自宅の作業スペースが全体の何%か
- 時間ベース:1日のうち副業に使う時間割合
- 利用実態ベース:通話・通信の利用状況、業務利用の頻度など
按分計算ロジック図解(面積/時間のイメージ)

どちらが正しいというより、自分が説明しやすい基準を1つ決めて固定するのがコツです。毎月バラバラにすると、後で自分が困ります。
※按分の判断は個別事情で変わるため、不安がある場合は税理士等に相談してください(本記事は一般情報です)。
具体例:会社員の副業(在宅メイン)で「運用の仕組み」を作る
例として、平日夜と週末に在宅で副業(ライティングやデザイン等)をするケースを想定します。
この人が最初に決める“3つのルール”
- ルール1:支出は必ず「用途メモ」(迷いを未来に持ち越さない)
- ルール2:電子取引は必ずデータで保存(PDF/メール/マイページDL)
- ルール3:週1回10分でログ入力(月末に地獄を作らない)
運用の流れ(これだけ)
- 買ったら:レシート撮影→月フォルダへ
- その場で:用途メモを一言(レシートかログに)
- 週1:スプレッドシートに入力(5〜10分)
経費の線引きで迷ったら、無理に経費に入れにいかず「保留」にして、メモだけ残します。後で専門家に相談する時も、メモがあれば話が早いです。
特典:経費管理用スプレッドシート(関数入り)の作り方(コピペOK)
ここからは、読者の作業をさらにラクにするための「経費・家事按分自動計算シート」の作り方です。記事末尾に「【コピペOK】経費・家事按分計算シート(自動計算)」のリンクを置く想定で、ここでは中身を再現できるようにします。
シート構成(おすすめは3枚)
- ①経費ログ:日々入力する表(レシートと紐づけ)
- ②按分マスター:通信費30%など、固定ルールを置く表
- ③月次集計:月別・カテゴリ別に自動集計
①経費ログ(入力表)
| A:日付 | B:カテゴリ | C:支払先 | D:内容 | E:用途メモ | F:金額 | G:按分率 | H:計上額 | I:支払方法 | J:証拠 |
|---|
計上額(H列)の自動計算(例)
- H2セル:=ROUND(F2*G2,0)(円単位で丸める例)
- 按分なしはG列を「1」に(100%)
②按分マスター(固定ルール表)
| カテゴリ | 按分率 | 根拠メモ |
|---|---|---|
| 通信費 | 0.30 | 副業利用が約3割(平日夜+週末) |
| 家賃 | 0.20 | 作業スペース10㎡/50㎡ |
経費ログ側のG列を、カテゴリから自動で引っ張るなら、XLOOKUP等で参照できます(例:=IFERROR(XLOOKUP(B2,按分マスター!A:A,按分マスター!B:B),1))。
※関数は環境で差が出るので、まずは手入力でもOKです。大切なのは「固定ルールのメモ」を残すことです。
③月次集計(カテゴリ別の合計)
月別に集計するなら、ログに「月(YYYY-MM)」列を追加すると簡単です(K列など)。
- K2セル:=TEXT(A2,”yyyy-mm”)
あとはSUMIFSで集計します。
- 例:2026-01の通信費合計(計上額H列)
=SUMIFS(経費ログ!H:H,経費ログ!K:K,”2026-01″,経費ログ!B:B,”通信費”)
電子取引データの検索に強くする「索引簿」も同じシートで作れる
電子取引データは「日付・金額・取引先」で探せる状態が重要になります。実務では、スプレッドシートに索引(インデックス)を作り、ファイル名と紐づける運用がしやすいです。
経費ログの「日付・金額・取引先・証拠(ファイル名)」が揃っていれば、ほぼそのまま索引簿として機能します。つまり、経費ログ=電子保存対応の土台になりやすい、ということです(詳細要件は公式案内で確認してください)。
よくある失敗3選と回避策
失敗1:レシートはあるのに「何のための支出か」説明できない
回避策:用途メモを必ず一言。特に打ち合わせ・交通費・学習費は「誰/何のため/何をした」があると強いです。
失敗2:月末まとめ入力で記憶が飛び、挫折する
回避策:週1回10分の固定ルーティン化。完璧にやらず、空欄があっても「続ける」を優先します。
失敗3:電子取引を印刷して満足してしまう(データが散逸)
回避策:ネット購入・クラウド領収書は、必ず「データのまま」月フォルダへ。ファイル名に日付・金額・取引先を入れて検索しやすくします。
すぐできるチェックリスト(今日からの記録ルール)
- スマホに「経費」フォルダを作り、月フォルダ(例:2026-01)を用意した
- 紙レシートは撮影し、用途メモを一言残した
- ネット購入・電子領収書は「印刷」ではなく「データで保存」した
- 経費ログに「日付・支払先・内容・用途メモ・金額・証拠」を入れた
- 混ざる支出は按分の基準(面積 or 時間)を決め、固定ルールとしてメモした
- 週1回10分の入力日をカレンダーに入れた
まとめ:チェックリストと次にやること
副業の経費は、丸暗記で勝つより、「領収書(証拠)+用途メモ(理由)+ログ(記録)」の運用で勝つほうが、圧倒的に安心で続きます。迷った支出は無理に攻めず、説明できる材料が揃う形で残し、必要なら専門家に確認できる状態にしておきましょう。
要点まとめです。
- 判断軸は「目的」と「関連性」=説明できるかどうか
- 証拠は「レシート/領収書+支払記録+用途メモ」の3点セット
- 電子取引(ネット購入等)は“データのまま保存”が基本
- 家事按分は「根拠を固定」して毎月ブレない運用にする
- スプレッドシートで自動計算すると、月末のストレスが激減する
次にやること(3ステップ)
- ステップ1:「経費」月フォルダを作り、今日のレシートを1枚だけ撮影して保存する
- ステップ2:経費ログ(スプレッドシート)を作り、5件だけ入力して「用途メモ」の習慣を作る
- ステップ3:混ざる支出(通信費など)について按分の基準を1つ決め、固定ルールとしてメモする(不安なら専門家へ)
