副業の収入管理は、会計ソフトを入れる前に「売上(請求)」「入金(キャッシュ)」「経費」を分けて、月1回の締め作業で自動集計できる形にしておくと、数字が苦手でも迷わず続きます。
特に大事なのは、売上=入金ではないという点。請求から入金までの“タイムラグ(売掛期間)”がある副業ほど、どんぶり勘定だと請求漏れ・未回収・資金繰り不安が起きやすくなります。
この記事では、家計簿以上・会計ソフト未満の「最強の型」として、スプレッドシート(Excelでも可)で使える収入管理テンプレ、自動集計の関数、請求漏れを防ぐアラート設計まで、月1で回る運用に落とし込みます。
※本記事は一般情報です。税務(確定申告・消費税・インボイス等)は状況で扱いが変わります。不安がある場合は税務署や税理士など専門家に確認してください。
お金管理の不安は「型」で消せる(会計ソフトは後でいい)
「先月納品したあの案件、まだ振り込まれてない気がするけど……確認するのが怖い」
「確定申告の時期になると、1年分の通帳とレシートをひっくり返して絶望する」
副業を始めると、本業の給料とは別に「売上」や「経費」が発生します。でも多くの初心者は、“いくら請求して、いくら入ってきて、いくら使ったか”が曖昧なまま走りがちです。これだと、稼げているのかどうかも分からず、最悪の場合請求漏れ(タダ働き)に気づかないこともあります。
実は、副業のお金管理に高度な会計知識は不要です。必要なのは、「売上・入金・経費」をパズルのように当てはめるだけの“テンプレ(型)”。月数件の副業なら、まずは無料のスプレッドシート(Excel/Google)で十分回るケースが多いです。
この記事では、数字が苦手な人でも月1回・30分で終わる「スプレッドシートでの収入管理術」を解説します。どんぶり勘定を卒業して、「把握できている安心」を手に入れましょう。
なぜ副業は「売上(請求)」と「入金(キャッシュ)」を分けるべきか
副業で一番多い混乱が、売上(請求)=入金(お金が入った)だと思ってしまうことです。けれど実務では、仕事が終わっても入金は来月、再来月…というタイムラグが普通に起きます。
ここを分けないと、次の事故が起きます。
- 請求漏れ:納品はしたのに請求書を出していない
- 未回収の見落とし:請求済みなのに入金されていない
- 資金繰りの不安:売上は立っているのに手元資金が足りない
つまり、管理のゴールは「会計として正しい帳簿」より先に、副業者として困らない状態(漏れない・探せる・説明できる)を作ることです。
そのために、この記事では次の“3分割”で管理します。
- 売上(請求)台帳:誰に、いつ、いくら請求したか(仕事の対価)
- 入金台帳:いつ、いくら入ったか(実際のキャッシュ)
- 経費台帳:いつ、何に、いくら使ったか(証拠とセット)
この3つを分けるだけで、月末にやることが機械的になり、精神的な不安が減ります。
視覚で理解:お金の流れ図解(なぜシートを分けるのか)
「分ける必要は分かったけど、なぜそこまで?」という人向けに、お金の流れを図にします。副業のお金は、だいたいこの順番で動きます。

ここで重要なのが、「仕事完了」と「入金確認」の間にタイムラグがあることです。
だからこそ、売上(請求)と入金(キャッシュ)を同じ表で管理しようとすると、必ずグチャグチャになります。
シートを分けると、月末に見るべき数字がシンプルになります。
- 未回収(請求−入金):入ってきていないお金があるか
- 差額(入金−経費):手元資金が増えているか
- 証拠漏れ:領収書・請求書が揃っているか
副業収入管理テンプレ:スプレッドシート5シート構成
ここからは、実際に作るテンプレです。GoogleスプレッドシートでもExcelでもOK。最初は“完成形”を目指さず、まずこの5シートを作って、月1締めが回る状態を作りましょう。
- ①売上(請求)台帳:請求漏れ防止の中心
- ②入金台帳:キャッシュの見える化
- ③経費台帳:経費+証拠+按分まで
- ④証拠インデックス:請求書/領収書の保存場所
- ⑤月次ダッシュボード:月別の自動集計とアラート
シート① 売上(請求)台帳(インボイスを意識するなら「税額列」を追加)
| 完了日 | 請求日 | 案件名 | 取引先 | 請求書No | 請求額(税込) | 消費税額(任意) | 支払期限 | ステータス | 証拠(請求書ファイル名/URL) | メモ |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 2026/01/28 | 2026/01/31 | 記事作成 | A社 | INV-026 | 33,000 | (任意) | 2026/02/28 | 請求済 | INV-026_202601_33000_A社.pdf | 月末締め翌月末払い |
※インボイス制度の影響で、請求書の記載要件(登録番号、税率ごとの税額など)が関係するケースがあります。あなたがインボイス発行事業者かどうか、取引先の要望などで必要項目は変わるため、ここでは「税額を分けて記録できる列を用意しておくと後でスムーズ」という実務の工夫として紹介します。不安があれば専門家に確認してください。
シート② 入金台帳(請求書Noで必ず紐づける)
| 入金日 | 取引先 | 入金額 | 手数料 | 純入金 | 対応する請求書No | 入金方法 | メモ |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 2026/02/28 | A社 | 33,000 | 0 | 33,000 | INV-026 | 振込 |
純入金は、純入金=入金額−手数料でOKです(関数で自動化します)。
シート③ 経費台帳(経費+証拠+按分を一体化)
| 日付 | カテゴリ | 支払先 | 内容 | 用途メモ | 金額 | 按分率 | 計上額 | 支払方法 | 証拠(ファイル名/URL) |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 2026/01/15 | ツール | クラウドA | 月額利用料 | 制作管理 | 1,200 | 1.0 | 1,200 | カード | 20260115_1200_クラウドA_利用料.pdf |
按分率は「1.0=100%」で統一すると計算が簡単です。家事按分がある人は、按分率に0.3などを入れて計上額を自動計算します(税務判断に不安がある場合は専門家へ)。
シート④ 証拠インデックス(探せる状態を作る)
| 日付 | 種別(請求書/領収書/明細) | 取引先/店舗 | 金額 | 関連No(請求書Noなど) | 保存場所(ファイル名/URL) | メモ |
|---|
「証拠がどこにあるか」を探せる状態にするための索引です。経費台帳や売上台帳と完全一致しなくてもOK。後から見つかることが最優先です。
シート⑤ 月次ダッシュボード(自動集計+未回収アラート)
| 月 | 売上合計(請求) | 入金合計(純入金) | 経費合計(計上額) | 差額(入金−経費) | 未回収(請求−入金) | 請求漏れ件数 | 期限超過の未回収件数 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 2026-01 | (自動) | (自動) | (自動) | (自動) | (自動) | (自動) | (自動) |
自動集計の関数例:月1締めが「確認だけ」になる
ここでは、テンプレを“自動で回る”形にするための関数例を紹介します。Excel/スプレッドシートで細部は違うことがありますが、考え方は同じです。難しければ、まずは手入力→慣れてから自動化でOKです。
前提:各台帳に「月(YYYY-MM)」列を作る
売上台帳・入金台帳・経費台帳のそれぞれに、月次集計用の列を追加します(例:一番右に「月」列)。
- 月列の例:=TEXT(日付セル,”yyyy-mm”)
ダッシュボード:月別の合計(SUMIFS)
- 売上合計(請求):指定月の請求額合計
- 入金合計(純入金):指定月の純入金合計
- 経費合計(計上額):指定月の計上額合計
例(シート名は仮):
- 売上合計:=SUMIFS(売上台帳!請求額列, 売上台帳!月列, ダッシュボード!月セル)
- 入金合計:=SUMIFS(入金台帳!純入金列, 入金台帳!月列, ダッシュボード!月セル)
- 経費合計:=SUMIFS(経費台帳!計上額列, 経費台帳!月列, ダッシュボード!月セル)
差額と未回収は計算だけでOKです。
- 差額:=入金合計−経費合計
- 未回収:=売上合計−入金合計
請求漏れを数える(ステータスでカウント)
売上台帳に「ステータス(未請求/請求済/入金済)」を入れておくと、請求漏れが数字で出ます。
- 請求漏れ件数:=COUNTIFS(売上台帳!月列, 月セル, 売上台帳!ステータス列, “未請求”)
期限超過の未回収を数える(支払期限×ステータス)
「支払期限を過ぎているのに入金済みになっていない」件数をアラートにします。
- 期限超過の未回収件数(概念):支払期限が今日より前 かつ ステータスが入金済み以外
例(今日を基準):
- =COUNTIFS(売上台帳!支払期限列,”<“&TODAY(), 売上台帳!ステータス列,”<>入金済”)
この数字が「1」でも出たら、月次締めで必ず確認します。
請求漏れを防ぐ「アラート機能」設計(条件付き書式が最強)
請求漏れは、気合では防げません。仕組みで防ぎます。おすすめは、売上台帳に条件付き書式を入れて、危ない行を自動で赤くする方法です。
アラート1:未請求のまま完了日から一定日数が経過(黄色)
- 対象:ステータスが「未請求」
- 条件:完了日から(例)7日以上経過
- 表示:黄色でハイライト
これで「忘れてた」が激減します。日数はあなたの業務サイクルに合わせてOKです。
アラート2:支払期限を過ぎた未回収(赤)
- 対象:ステータスが「入金済」以外
- 条件:支払期限が今日より前
- 表示:赤でハイライト
この赤が出たら、月次締めで「入金確認→先方連絡(必要なら)」の判断ができます。
アラート3:請求書Noが空欄(オレンジ)
- 対象:請求済なのに請求書Noが空
- 意味:入金台帳と紐づけできず、後で詰む
「Noが空欄=未完成」扱いにしておくと、運用がブレません。
月1でまとめる方法:月次締めチェックリスト(30分で終わる順番)
テンプレは作るより、締め方(ルーティン)が命です。ここでは「月1回で必ず終わる」順番を固定します。
- Step1:証拠を回収(請求書PDF・領収書画像・明細などを月フォルダへ)
- Step2:売上台帳を更新(完了した仕事→未請求がないか確認→請求書No付与)
- Step3:入金台帳を更新(通帳/明細を見て、請求書Noで紐づけ)
- Step4:経費台帳を更新(用途メモ+証拠のファイル名を必ず入れる)
- Step5:ダッシュボード確認(未回収・請求漏れ・期限超過をチェック)
月次締めで見るべき数字は3つだけ
- 未回収(請求−入金):入ってきていないお金があるか
- 請求漏れ件数:未請求が残っていないか
- 証拠漏れ:証拠列が空欄の行がないか
これだけ見れば、確定申告の時期に通帳とレシートをひっくり返す確率が一気に下がります。
よくある失敗5選と回避策
失敗1:売上と入金を同じ表で管理して混乱する
回避策:売上(請求)台帳と入金台帳を分ける。請求書Noで紐づける。
失敗2:請求書Noを付けないので、入金が追えない
回避策:Noがない案件は「未完成」。請求済みの時点で必ず付与する。
失敗3:未回収が埋もれて放置される
回避策:支払期限×ステータスでアラート(赤表示)。月次締めで必ず確認。
失敗4:経費の証拠が散らばって探せない
回避策:月フォルダ+ファイル名ルール。台帳の「証拠」列にファイル名を貼る。
失敗5:最初から完璧を目指して挫折する
回避策:最初の1ヶ月は「売上・入金・経費を最低限」だけ。自動化は後から足す。
すぐできるチェックリスト(導入1日目にやること)
- スプレッドシートに5シート(売上/入金/経費/証拠/ダッシュボード)を作った
- 請求書No(INV-001…)を付ける運用を決めた
- 売上台帳に「支払期限」と「ステータス」を入れた
- 未請求・期限超過の条件付き書式(アラート)を入れた
- 月1回の締め日(例:毎月1日 or 月末日曜)をカレンダーに入れた
まとめ:チェックリストと次にやること
副業の収入管理は、才能ではなくテンプレ(型)で勝てます。売上(請求)・入金(キャッシュ)・経費を分け、月1回の締めで「未回収」「請求漏れ」「証拠漏れ」を潰せる形にすると、確定申告前のパニックが激減します。
要点まとめです。
- 副業は売上(請求)と入金(キャッシュ)を分けるのが最重要
- 請求書Noで紐づけると、入金追跡と未回収管理がラクになる
- ダッシュボードで月次の合計・差額・未回収を自動集計する
- 条件付き書式のアラートで、請求漏れと期限超過を防ぐ
- インボイス等で税額管理が必要な人は、売上台帳に「税額列」を用意しておくと後でスムーズ
次にやること(3ステップ)
- ステップ1:この記事の5シート構成でスプレッドシートを作り、今月の案件を1件だけ「売上台帳」に入力する(請求書Noを付ける)
- ステップ2:売上台帳にアラート(未請求=黄色、期限超過=赤)を設定し、月1締めのチェック項目を固定する
- ステップ3:月次ダッシュボードにSUMIFSで自動集計を入れ、「未回収」「差額」が見える状態にする(不安な税務は専門家へ)
